スモールM&AにはスモールDDを

こんにちは、最首です。会計士時代からやって来た仕事に「DD(デューデリジェンス)」という仕事があるのですが、最近、少しトレンドが変わってきているなぁ、と感じたので記事を書いてみたいと思います。

そもそもDD(デューデリジェンス)って?

デューデリジェンス(Due Diligence/省略して「DD」)って、不思議というか曖昧な言葉なんですよね。

言葉の意味からすると「注意を払う義務」みたいなものなのですけど、ビジネスの文脈では「M&A(会社そのものや事業を対象にした購入取引、企業買収ともいう)のような金額的に重要な取引をする際に、取引の対象となる企業や事業の内情を、最終的な契約や決済をする前に調査すること」それ自体を指して使われるようになっている言葉です。

もともとDDは「(取引をする人の)注意義務」を指していた言葉だったのですが「(専門家を使って)義務を果たすために行う行為」そのものの意味になってきているんですね。

ちなみに、注意を払わないといけないのは誰かというと、会社の取締役とか業務を執行する経営者ポジションにいる方で、じゃぁ、誰に対するの義務なのかっていうと、会社のオーナーである株主ってことです。

元々はある程度、大きな会社向けのメニュー

なのでDDってのは、株主と経営者が別々の人たちになっていて、その信頼関係維持のためにやるべきことの多い上場企業とかで使われる考え方なんですよね。

経営者がオーナーでもある非上場とか中小企業では、義務を果たす経営者も果たされる株主も基本的同じ人たちなので、「(株主のために)DDしなきゃいけない義務」みたいのは経営者にはなくて、独自のリスク感覚で、特に調査をせずに「よし、買った!」ってのも本当はアリなのです。

なので、私が元々携わっていたDDの仕事も、上場企業がどこかの会社や事業を買収するスタイルのM&Aや、なんらかの理由で株主と経営者が分かれていて、経営者が受託責任(他の人から会社を任されている責任)を明確な形で果たさなければいけないような、それなりに大きな会社のDDが中心でした。

そして、この手のDDって、そういった責任を果たすために確認すべきことが、ある程度マニュアル化されているというか「最低限これくらいは見るよね」みたいなもののレベルが高く(つまり、項目が多く網羅的で)綿密な調査の上で、びっしりと書き込んだレポートとかを提出するというのが一般的でした。

最首
最首

ただ、こういう作業を専門家がやるってことは、それなりのお値段になってしまうわけで・・・DDの仕事っていうのは、安くても数百万というオーダーの報酬でやる仕事でした。

プチ&オーダーメイド型DDが今のトレンド

ただ、最近はちょっとトレンドが変わってきているんですよね。

先ほど書いたように、DDは上場企業とかでなければ、つまり、M&Aの買い手がオーナー企業であれば、どうしても行わなきゃいけないものではなくて、独自のリスク感覚でやってしまっていい(やらなくてもいい)ものなのです。

そうすると、何も毎回マニュアル通りのびっしりした調査を行う必要はなくて、やるとしても「この点はリスキーな感じがするので、ちょっと専門家に見ておいてもらいたいんだよね・・」という、買い手が気になるところを、ピンポイントのオーダーでサクッと見て報告してもらうという手続きもアリになってくるのです。

私たち専門家としても、あれこれ細かいとこまでのチェックや、報告用の分厚いレポート作りをしなくてもいいのであれば、それなりにリーズナブルにサービスをやることもできますし・・・

というところで、最近はM&Aに慣れているプライベートファンドとかからだと、DDでも「細かいレポートはいらないので・・・」「このポイントだけ調査してもらえます?」みたいな、オーダーメイド型のスモールDDのお願いが増えてきているんだよなぁと感じているところでした。

この場合の専門家報酬は、日当+アルファで安い場合は数十万円程度から。やっぱり事業者さんとしては、リスクも抑えたいけれど、取引にかかるコストも抑えたいですもんね。こちらもそこまで手数がかからないのであれば、もともと得意分野ですし歓迎な仕事です。(企業調査って、多様な企業の実態を見ることができて結構面白いので。。。)

小規模M&Aで時々あるトラブル

ちなみに、小規模M&Aでどんなトラブルがあるかというと、

  • 会社の事業や資産に値段をつけて、M&Aの取引価格を決めるのだけど・・・
    → 思ったより売り上げの上がらない事業や、回収できない債権や価値のない資産などを、会社や事業の売却価値の計算に入れてしまって代金を払い過ぎた。
  • 価値がある事業だし、大きな問題はないはずという前提で取引をするのだけど・・・
    → 後から会社に隠れた債務が発覚したり、法律違反のビジネスをしていることがわかった。その帳尻を合わせるために、多大な出費が掛かったり、時には、事業を畳まなければならなくなった。
  • M&Aの後は、事業の引き継ぎをしてもらえると思っていたのだけど・・・・
    → 前の経営者さんは退職金を払ったら来なくなってしまったり、その方がいらっしゃらなくなると、元々の取引先や従業員さんたちとのつながりもギクシャクしてきて、事業をどう回したらいいかわからなくなってしまった。

というようなものがわりと典型で、そして時には、

  • 交渉をしている相手が会社のオーナーさんだと思っていたんだけれど・・・
    → 実は別のところにもオーナー(株主)がいて、その人からも株式を買い取らなければいけなくなった。思わぬ追加出費だけど、今さら後戻りできないし・・・

みたいな「そんなんあり得る?」みたいな取引もあります。この辺の調査や事前調整をしてリスクを下げておくのが、DDの役割なんですよね。

最首
最首

このあたりは、ある程度のお値段の商品を買う時に品質を確かめたくなるように、事業や会社をそれなりのお値段で譲ってもらうのだから、それなりに慎重にやりましょうねという世界です。

最近は、BATONSさんとご一緒しています

そんな最近、BATONSさんというM&Aのプラットフォーマーさんと一緒にお仕事をすることになりました。彼らは日本中で事業承継に向いた小規模M&Aの仲介を日本中で推し進めている事業者さんでして、先ほどのコンセプトに近い「バトンズDD」というプチDDメニューの提供も推進していたからです。

その費用は、DDとしては底値(というか見たことないくらい安い)とも言える「39.8万円」で、もちろん、そうすると「専門家が見る範囲っていうのはとても限られる」のですが、あとで問題が発生した場合でも、損害を「300万円」までカバーしてくれる保険付き(これとてもいい!)。

取引額が数百万とか2、3千万程度のM&Aであれば、これでいいよねって感じの画期的な商品です。規模がもう少し大きくなって5000万とか、1億とかになっても、大丈夫かなという気もします。(もちろん多少は追加の調査とか、保険金額の引き上げとかしておけると安心だけども。)

最首
最首

ちなみにDDの担い手は、事業承継だけではなくて、現在ポストコロナで案件が増えてきている企業再生分野でも必要になってきているようで、そういったこともあって、お声がけをいただいたような感じです。

栃木エリアだけでなく、おそらく全国的にも、多分こういったことを専門にしている人は足りないんでしょうね。最近はリモートも使えるので、大阪や京都などの西日本エリアの案件や、時にはさらに南の九州エリアの案件も手掛けさせていただいています。費用は規模に応じての適宜お見積りですが50-100万円くらいで行わせていただいていることが多いです。

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