刑事事件の被害者になったら・・・その支援も弁護士の仕事です

弁護士は一般的には、刑事事件では被疑者/被告人側の弁護をする機会が圧倒的に多いのですが、私の場合、同じくらい被害者側の代理人をやっていて、そのことはどうも弁護士としてかなりユニークな点みたいです。

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私のカウンセラー的な姿勢がちょうどいいせいか、弁護士になった直後から、被害者側の相談を受けてることが多く、気がついたらどこかの「被害者代理人分野精通弁護士名簿」とかいうやつに載っているらしく、やたらに打診を受けるようになっています。

ここが変だよ日本の刑事司法

さてさて、司法関係者だとあまり疑問に思わないらしいのですが、私は今でも「ここが変だよ日本人(古い?)」だと思っているのは、刑事事件を起こした人には国費で弁護人がつきますが、刑事事件の被害に遭った人には特に弁護人がついたりしないという点です。(刑事訴訟法の建前とか、被疑者/被告人の人権とかいう議論は、弁護士の端くれですから、一応わかっているのですが。。。)

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この点は「検察や警察あるいは裁判所が、被害者の味方してくれるじゃん」ってツッコミがあるかもしれませんね。いやいや、そうじゃないんですよ。。。。

彼らの使命は、あくまで捜査を通じた事案の真相解明と裁判を通じた犯人の適正な処罰でして。罰として「懲役○年、とか、罰金◯万円」とかやってくれますけど、それって別に被害者を意識してやってるわけじゃないのです。ニュアンスとしては社会秩序の維持とか、社会の防衛のためにかな。。。

実際、刑事手続の中では、被害者って置いてけぼりです。検察や警察は一生懸命、犯人と思しき被疑者を取り調べますが、被害者はなんというか「いち参考人」程度の扱いで。被疑者にはほぼ自動的に弁護士もついて、事件捜査の中心になって日々取り調べがなされたりするのですが、被害者のところへのコンタクトというのは事件直後(+α)くらいだったりします。

被害者は、刑事事件の脇役なの?

検察/警察は、どうやったら被害の賠償を受けられるかを教えてくれるアドバイザーにもなってくれないし、事件に巻き込まれたことのショックについて話を聞いてくれるカウンセラーにもなってくれず、ただ事件の調書を取られるだけで、知らないところで被害をもたらした被疑者/被告人の刑事手続や裁判が進んでいき、後から(希望を出していた場合は)結果だけが通知されてくる、みたいな立場になるのが被害者というポジションです。そしてそんな感じで放置されているところに、ある日突然、被疑者/被告人側の弁護士から連絡が来て「示談のご相談を・・・」とか言ってきたりします。

刑事事件の被害者って、刑事事件の重要な片側ポジションなわけで、フツーの感覚で言ったら「主役級」の重要な立場だと思うんですけどね。ただ、刑事司法の仕組みの中では、被疑者/被告人がとにかく主役で、それを追い詰める検察官や警察が準主役、それを裁く裁判官や検察を阻止しようとする弁護士が主要な脇役みたいなポジションになっちゃっているんですよね。なんというか、刑事ドラマとかでも、被害者の扱いってじゃないですか。あれに近いと言ったらいいのかな。

でもね、現実の世界で被害者は(当たり前ですが)相当大変なんですよ。誰もアシストしてくれない、刑事司法の手続きからも疎外されちゃって、どう気持ちの整理をつけていいかわからないって方が結構いらっしゃいます(人間として当然ですよね)。

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そんな時に法テラスとか、被害者支援センターとか、弁護士会に相談すると、私みたいな弁護士のところに連絡が来るんです。(検察官が紹介してくれることも、最近増えてきたかな。)

相談内容は、こんな感じ(様々です)

いただくご相談の内容というのは、じつに様々です。

  • 被害に遭ったんだけど、どんな感じで警察とやりとりしたらいいかわからない。
  • 相手が警察に捕まったんだけど、この後どうしたらいいんだろう。
  • 相手の弁護士から示談の話がきているんだけど。。。。どうしたら?
  • 相手の弁護士とやりとりしたくないので、代わりに交渉して欲しいのですが・・・・
  • そもそも相手からなんの連絡もないんです。賠償金とか取れるんでしょうか

などなど・・・いろいろありすぎてパターン化できないです。その方が置かれているタイミングにも、相手の出方にもよりけりでいろいろです。対応の仕方も、状況にもご本人の立場や考えや希望よっても変わってくるから、なかなかどうしたらいいか判断つかないですよね。

あと、刑事事件の場合って周囲に相談するのもはばかられるというか・・・もちろんプライバシー的なこともあるんですけどね。なんというかですね、ざっくりした傾向(&多分私の偏見)なんですけど、素人の方って、刑事事件についてはちょっと的の外れたアドバイスをしがちなんですよね。なんつーか、刑事ドラマの影響なんですかねぇ。。。。「それはこういうもんでしょ」みたいなことをあんまり根拠なく言う人が少なくないというか。

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うちに相談に来る人、大体そのせいでちょっと怒ってます(「人ごとだと思って!」みたいな口調で)。

被害に遭った人にしか、わかんない経験ってあると思うんです。。。

それぞれにとても個人的な体験だと思うので、一般化はしたくないんですけど、刑事事件の被害に遭うと「どこか実感がない感じ」になっちゃう部分があるように思うんです。私自身経験あるんですが、あまりに非日常体験すぎて、どういう風に起きたことを消化していいかわからなくなる。なので、そもそも警察に行こうみたいなことが思いつかないことが普通に起こるみたいです(これは後々、証拠の問題を引き起こしがちなのですが)。

なんかきっかけがあって「そうだ、警察に行かなきゃ」ってなったとしても、どういう風に話したらいいかわからない。というか、警察官と話すこと自体、普通の人には大変なんです。「間違ったこと言ったら、大ごとになっちゃいそうだし・・・」みたいなプレッシャーもあるし、なんか警察官って妙に圧があるじゃないですか。心理的にダメージ受けて弱ってる状態だったら、それだけで辛くて避けたい体験でしょう。それでいてあんまり警察の人って、その辺りの心情に疎くて(最近は多少変わってきた気もしますが)やりとりで容赦ない目に遭わされたりすることも。

頑張ってなんとか事情を話したとしても、スパッと「協力ありがとうございました」で終わっちゃうんですよね。「えっ、この後どうしたらいいの?」って感じじゃないですか。「あれ?私、一応被害者(のはず)なんだけど・・・こんな扱いなの?」って思っちゃいますよね。相談に来られる方の多くの方が「私の感じ方がおかしいんでしょうか・・・」っておっしゃいます。私は声を大にして言いたい!「おかしいのは司法関係者の方ですから!」

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・・・・というわけで、私がこの役割をやっている理由がなんとなく伝わったでしょうか。なんかその司法関係者の鈍感さに対する怒りがあるんですねぇ、おそらく個人的にも。おかしいと思うんですよ、ホントに。

なので、素朴に役に立ちたいなと。。

そんなわけで、だからと言って過剰に何か特別な何かをするってわけでもないんですけど、弁護士なので刑事司法の仕組みは一通りわかっていますし、それぞれの局面ですべきこともわかってますので、かなりお力になれるよなぁと思って、被害者支援の仕事を続けています。

もちろん被害者の立場って、普段から被害に遭うと思って生活しているわけじゃないので、証拠がなくてアクションの取りようがあまりない時もあるのですが、それだってなかなか一人では(そもそもそうなのかどうか)判断できないことですからね。

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ちなみに、法テラスとか被害者相談センターとか経由の場合は、大抵、被害者相談は初回の相談料が無料になりますので、その辺りもうまく仕組みを使ってみてください(直接連絡をいただいてもそれなりの対応させていただいていますが。。。)

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